2018年2月に内閣府が公表した世論調査では、夫婦同姓も夫婦別姓も選べる選択的夫婦別姓制度の導入に賛成・容認と答えた国民は66.9%となり、反対の29.3%を大きく上回った。特に多くの人が初婚を迎える30歳から39歳における賛成・容認の割合は84.4%にのぼる。
また、同年3月20日の衆議院法務委員会において、夫婦同姓を義務づけている国は、世界で日本だけであることを法務省が答弁した。男女同権の理念に則り、2003年から日本政府に対して改善勧告を続けてきた国連女性差別撤廃委員会は、2016年3月の第7回及び第8回報告に対する最終見解において、改めて「女性が婚姻前の姓を保持できるよう夫婦の氏の選択に関する法規定を改正すること」を求めている。
1996年2月26日に法制審議会が民法改正を答申してから24年が経過しようとしているが、未だ選択的夫婦別姓制度を導入する法改正の見通しは立っていない。最高裁判所は2015年12月16日に、夫婦同姓規定を合憲とする一方、「選択肢が設けられていないことの不合理」については裁判で見出すことは困難とした上で、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」と、民法の見直しを国会に委ねた。しかし、4年以上にわたって議論が進まないために、2018年には選択的夫婦別姓を求める裁判が4件も提起されている。
平均初婚年齢が30歳前後の現代においては、婚姻前に個人名で信用・実績・資産を築く人が増えている。改姓によってこれまで築き上げたキャリアに分断が生じる例や、旧姓の使用で不利益・混乱が生じる例もあり、それを避けるために結婚を諦める人、事実婚を選ばざるを得ない人が一定数いることは事実である。このような現状に鑑みても、最高裁判決の趣旨を踏まえて議論を進めていく必要があると考える。
よって、本区議会は国会及び政府に対し、選択的夫婦別姓を可能とする法制度について、積極的な議論を推進するよう強く求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和2年3月27日
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣 あて
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